※この記事は上級編になります。初級編・中級編をまだ読んでない方は初級編と中級編から読むのをオススメします!
初級編はコチラから→知識ゼロでも分かる!失敗しないインターネット回線の選び方【初級編】
中級編はコチラから→知識ゼロでも分かる!失敗しないインターネット回線の選び方【中級編】
知識ゼロからでも分かる失敗しないインターネット回線の選び方シリーズの最後!今回は上級編になります。
上級編では、初級編・中級編では簡単に説明していた部分をもう少し詳しく解説していこうと思います。個人的には初級編の内容が分かればもう大丈夫。中級編の内容も分かれば更に条件が絞れるようになる。って感じで上級編は更にその延長になっています。
初級編と中級編を読んで『もっと詳しく知りたい!』と思った方や『勉強したい!』と思った方向けの入り口といった感じにもなっているので、『興味がないよー』と思った方は軽く目を通して難しそうなところはスキップしちゃって下さい!
初級編と中級編のおさらい
大きく分けると、初級編・中級編で説明したのは以下の6つです。
- 住んでいる地域
- 戸建てorマンション
- 契約しているスマホ・携帯電話の会社
- 回線速度について
- IPv6とIPv4とIPv4 over IPv6について
- IPoEとPPPoEについて
この6つについて、どういう違いが出るのか?どっちがいいのか?を簡単に説明しました。
上級編ではもう少し詳しく説明していこうと思います。
インターネットが利用できるまでの流れ
インターネットを繋ぐためには利用する回線を用意して配線をする係と、回線をインターネットに繋げる係の別々に2つの係がいます。利用する回線を用意して配線してくれる係の事を回線事業者と呼び、回線をインターネットに繋げてくれる係の事を接続事業者/プロバイダー/ISPと呼びます。
最近では、回線事業者と接続事業者が協力体制になっている所もあるため、別々に契約する必要が無くなっていたり、同時に契約をすることで特典がついてきたりします。それでも面倒に感じてしまう方は代理店に任せるのがい一番ですね。
ただ、どちらも知識がないと必要以上にお金がかかってしまったり、自分が求めているものとは違った環境になってしまったりするので、業者や代理店に全てを任せるのは避けましょう
住んでいる地域については詳しく説明することもなく初級編の通りです。
サービスを提供できるエリアは回線事業者によって違うので、自分の住んでいる地域にサービスを提供している回線事業者の中から自分に合った回線を選ぶようにしましょう。
戸建てorマンション
戸建てとマンションでは工事内容や構造に違いがあります。
戸建ての場合はシンプルで、基本的には先ほど説明した回線事業者や接続事業者と契約をして工事をしてもらうだけで全部済みますが、マンションだと複雑になってしまう可能性があります。
マンションの場合、マンション側があらかじめ設備している回線を利用したい場合に関しては、あとは契約するだけで全部済むので工事の必要も無く、むしろ戸建てよりシンプルになるのですが、マンション側があらかじめ設備している回線とは違う回線を利用したい場合には、工事の許可を貰う必要があったり、回線速度を安定させる・速度を出すために必要な配線方式の確認など、事前にマンションの管理会社と話をしたり、許可を貰う必要があります。
マンションの回線が不安定な理由
『マンションは回線が遅い』『マンションは回線が混みやすい』といった意見を目にした事がありませんか?これは本当です。
このマンションの回線が不安定問題は配線方式等の構造を知ると分かるので、そういった現象が起きてしまう仕組みについて説明していきます。
戸建てでは電柱から家まで回線が直接繋がれますが、マンションでは住人全員で1つの回線を共有するので電柱から自分の部屋に直接繋がれる訳ではなく、MDF室にあるPT盤に繋ぎ、PT盤からマンションの各部屋へと回線が届けられています。
回線が遅い、混みやすいと言われているのは、このPT盤からの各部屋に届ける配線方式の違いにあります。
配線方式について
配線方式の説明を簡単にすると、PT盤に繋いだ光回線をどんな方法でマンションの各部屋へと配っているのか?です。
現在ある配線方式は主にVDSL方式・光配線方式・LAN配線方式の3つなんですが、1つだけ絶対に選んではいけない配線方式があります。それはVDSL方式です。
絶対に選んではいけない?VDSL方式とは
なぜ絶対に選んではいけないと言われているのか?それは、せっかく繋いだ光回線を電話回線にしてしまうからです。
VDSL方式・・・VDSL方式はMDF室までは光回線なのですが、MDF室からマンションの各部屋までは電話回線で届ける仕組みになっています。回線速度で言うと最大1Gbpsの光回線がMDF室までにしか届かず、マンションの各部屋に届けられるのは最大100Mbpsの電話回線という事になります。ベストな状態でも100Mbpsが上限なので、平常時や混雑時には更に下がると考えるとVDSL方式は避けた方がいいと思います。
恐らく、マンションで一番多く使われている配線方式です。
光配線方式とLAN配線方式の違い
光配線方式・・・光配線方式は戸建てと同じ配線方式で最初から最後まで光回線になるので、マンションでも安定していて速い回線が利用できます。
LAN配線方式・・・LAN配線方式は光配線方式では各部屋にあるONUがMDF室にあるという点から、光配線方式ほどの安定感を出すのは難しくなっています。また、通信機器に古いものを採用していたり、MDF室からの物理的な距離によって回線の安定が損なわれてしまいますし、条件によっては上限100Mbpsという制限がかかってしまうと言われています。
LAN配線方式で100Mbps以上を出すには何かと条件が付いてくるといった感じですかね。LAN配線方式を採用しているマンションは非常に数が少ないと言われています。
配線方式で選ぶなら
以上のことから、簡単にまとめると
光配線方式のマンションは文句なしで◎
LAN配線方式のマンションは条件次第では悪くはないが事前確認が必要のため△
VDSL方式のマンションは△だが、光配線方式に変更する工事の許可が貰えないなら×
といった感じになります。
VDSL方式と同じ電話回線なのに最大644Mbpsも出るG.Fast方式(タイプG)というものが独自回線であるKDDI・auひかりでは利用できるので、限定的にはなってしまいますが対応しているマンションではG.Fast方式にするのもいいと思います。
契約しているスマホ・携帯電話の会社かどうか
初級編では軽く説明しましたが、ここで違ってくるのは金額や受けられる特典です。回線事業者と接続事業者/プロバイダーの2つがあると言いましたが、この内の回線事業者がスマホ・携帯電話の会社にあたります。
契約しているスマホ・携帯電話の会社と協力体制をとっている接続事業者では、スマホ・携帯電話の料金がセット割で安くなったり、回線の料金もセット割で安くなったり他よりかなりお得な内容になっています。
この協力体制の事を光コラボ(光コラボレーション)と言います。
光コラボとは
日本で唯一、日本全国に光回線を届けられるNTT西日本・東日本が光回線の普及等を目的に『どこでもNTTの光回線(フレッツ光)を使ってもいいですよ』と光回線を提供をして、光回線を提供してもらった接続事業者(プロバイダー)が光回線と一緒にプロバイダーも契約出来るようにしたのが光コラボです。
光コラボで受けられるセット割や特典などの割引サービスはプロバイダーによって変わってきます。具体的な違いとして例を挙げると、月額料金が安くなったり、工事費が無料になったり、キャッシュバックがあったり、解約時にかかる違約金を負担してくれたり、様々な違いがあります。
契約しているスマホ・携帯電話の会社の光コラボもあれば、契約していないスマホ・携帯電話の会社の光コラボもあります。光コラボ=セット割という訳ではなく、契約しているスマホ・携帯電話の会社と光コラボはセット割で安くなる場合がある。という点は少し注意してください。
中には特典が受けられる条件が厳しめな所もあったりするので、慎重に選ぶ事が重要です。
契約を決める前に直接“特典が受けられるのかどうか”を聞いて、あらかじめ確認をとってみると良いと思います。
回線速度について
回線の速度は、先ほど説明した光回線と電話回線、3つの配線方式以外にも影響を及ぼす要素はあります。
『回線速度を速くしたい!』を分かりやすく現実にあるもので置き換えると『美味しいご飯が食べたい!』みたいな感じです。
美味しいご飯を食べるためにはどんな食材を使うのか どんな料理を作るのか どうやって調理するのか 誰が調理するのか といった要素が複数あると思いますが、回線速度も同じです。
光回線と電話回線、3つの配線方式の他に、IPv6とIPv4、IPoE方式とPPPoE方式も関わってきます。
IPv6とIPv4の違い
中級編で説明した内容を簡単にまとめると
- IPv6がバージョン6で最新。IPv4はバージョン4で従来のもの。
- IPv6はIPアドレスが340澗通りもあるが、IPv4では43億通りしかない。※世界の人口は約78億人
- IPv4では混雑していた回線がIPv6では解決できる。その理由がIPoE方式。
という説明をしていたと思います。そして、3.IPv6で利用できるIPoE方式は回線が混雑しないという説明をするために、IPoE方式とPPPoE方式の違いの説明に移りました。
IPoE方式とPPPoE方式の違い
こちらも中級編で説明した内容を簡単にまとめると
- IPoE方式はIPv6でしか利用できない最新の接続方式。PPPoE方式はIPv6からもIPv4からも利用できる従来の接続方式。
- IPoE方式はIDとパスワードの設定をする作業が不要。PPPoE方式はIDとパスワードを設定する作業が必要。
- IDとパスワードの認証作業の部分にアクセスが集中することにより回線が混雑してしまう。
といった内容でしたが、上級編では認証IDやパスワードの設定が不要になった理由について説明していこうと思います。
IPoE方式だと混雑しにくくなったワケ
PPPoE方式ではインターネットにアクセスする際にRADIUS認証と言われるユーザー認証が必要になっています。
RADIUS認証を簡単に言うと、設定しているIDとパスワードを照合してもらって認証してもらう作業のことで、この作業を行うためにはNTE/網終端装置を経由しなくていけないのですが、このNTE/網終端装置にアクセスが集中する事で処理スピードが追い付かず回線が混雑してしまうことで回線が遅くなってしまったり、不安定になってしまいます。
また、PPPoE方式ではRADIUS認証を行うために専用の通信機器(ルーターやアダブタ等)をユーザー側で設置する必要があります。
一方、最新のIPoE方式ではRADIUS認証をする必要が無くなり、ユーザー認証ではなく回線認証になっています。
回線認証では、認証作業を回線側がやってくれるので、NTE/網終端装置を経由する必要も、RADIUS認証をする必要も、RADIUS認証に必要なIDとパスワードを設定する必要も、RADIUS認証をするために必要な通信機器を設置する必要が無くなったことにより、回線が混雑しにくくなったというワケです。
IPoE方式ではGWR/ゲートウェイルーターを経由してインターネットに繋がれるようになっています。
NTEとGWRについて
回線が混雑していたNTEではなく、GWRを経由する事になったIPoE方式ではPPPoE方式と以下の差があります。
まず、NTEが必須であるPPPoE方式ではトラフィック制約(通信量の制限)というものが最大2Gbpsとされていますが、GWRでは最大100Gbpsにまで制限が緩和されています。また、セッション制約(同時に通信を繋いでいい数の制限)でも、NTEではNTEに収容できるセッション数によって左右されていましたが、GWRになったことでセッションという概念が無くなり、制限が無くなっています。
簡単に言うと、回線が混雑したり、処理が追い付かなくなるといった事態を避けるためにあった制限が緩和された、無くなったということなので、今まで以上の余裕が生まれたという事だと思います。
OCNでは収容設計が2倍になったという事もあり、混雑する状況から余裕をもった光回線を提供できるようになっています。
シンプルに、簡単になったのがIPoE方式
IPoE方式がオススメという説明がPPPoE方式との比較になった事で、内容が複雑になってしまいましたが、最新のIPoE方式は複雑だった部分をシンプルにしたものなので、比較した時に複雑になってしまったのはPPPoE方式のせいです。
このタイミングでIPoEやPPPoEという名前の意味を知ると、頭に入ってきやすいと思います。
IPoEやPPPoEという名前の意味
最初に言ってもあまり頭に入ってこないと思ったので最後に回しましたが、このタイミングで知ることで伏線回収みたいな感じでスッキリすると思います。
PPP・・・PPPはPoint-to-Point Protocolの頭文字で、2点間を接続して通信をする際の通信プロトコルで、元々はダイヤルアップ接続やISDNという、電話回線からインターネットに接続をするときに用いられたプロトコル。
PPPoE・・・PPPoEはPoint-to-Point Protocol over Ethernetの頭文字で、PPPの技術を元にイーサネット上でも利用できるように応用した通信プロトコルです。そのため、インターネットに直接接続することは出来ず、イーサネット上で利用するにはパソコン→ルーター→プロバイダー→インターネットという少し複雑なルートを辿るようになっています。
IPoE・・・IPoEはInternet Protocol over Ethernetの頭文字で、最初からインターネットプロトコルやイーサネット上での利用を前提として新しく生まれた通信方式で、インターネットに直接接続することが可能になっています。
時系列順に並べるとPPP→PPPoE→IPoEという流れになります。
PPP方式はイーサネット上で利用する必要があまりなかった時代に使われていた通信方式なのですが、時代の流れと共にイーサネット上で利用できる必要が出てきました。そこで生まれたのがPPP方式なのにイーサネット上でも利用できる通信方式、PPPoE(PPP over Ethernet)方式です。
ですが、このPPPoE方式はイーサネット上でも利用できるようになったPPP方式であり、イーサネット上で利用するために作られたものでは無いんです。
つまり、最初からイーサネット上で利用する事を前提とした通信方式を新しく作ることができれば、間違いなくPPPoE方式よりも優れたものが出来上がるはずです。
複雑にしなきゃいけなかった部分をシンプルにすることに成功した技術がIPoE方式です。
初級編・中級編・上級編のまとめ
初級編・中級編・上級編で説明してきた事をまとめるとこんな感じです。
- 住んでいる地域
- 前提の条件として住んでいる地域に提供されている回線から選ぶ
- 戸建てかマンションか
- マンションは回線の質が落ちやすい。配線方式が超重要
- 契約しているスマホ・携帯電話の会社
- セット割があったり、光コラボだと割引や特典サービスが付いたりお得
- 回線速度ついて
- 最低でも常時30Mbps以上は欲しい。用途によっては最低で100Mbps以上は必要
- IPoEとIPv4にはメリットとデメリットがある。IPv4 over IPv6がオススメ
この4つだけは絶対に忘れちゃいけないホー!
最後に
上級編まで読んで下さってありがとうございます。知識ゼロでも分かる!失敗しないインターネット回線の選び方シリーズは以上となります。
知識ゼロの状態の方に向けて分かりやすく伝える事を第一に考えて説明をしてきたので、説明不足であったり、間違えている箇所があるかもしれません。その際はコメント等で教えて頂ければ幸いです。
それでも、知識ゼロの方がこのシリーズを読む前と読んだ後では、今まで以上に自分に合った回線を探しやすくなっていると思います。
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